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破綻から6年。デトロイトの現状

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財政破綻都市・デトロイト。アメリカ合衆国ミシガン州に位置し、過去に自動車産業で栄華を極めた街が1兆8千億円の連邦破産法の適用を受けたのが2013年。その後「全米一の治安の悪い都市」とされ、人口も180万人の最盛期から70万人へと激減した。

この都市でこの5月「サステナブル・ブランド国際会議2017」は開催されることとなり、当初は「どうなることか」と思っていた。が、そこには新しい都市へと生まれ変わろうと民間企業が動き出す姿があった。

デトロイト関連で日本でも話題となったのが、印象派の絵画を多く所蔵するデトロイト美術館の6万5千点の美術品を市が売却しようとした時だ。これに対する市民の反対運動と様々な寄付が集まったことで、結果として一点たりとも売却されることはなくなり、美術館は市民の誇りとなった。
この街の再生を民間投資で始めたのが「Quicken Loan」という金融機関創業者であり、バスケットボールなどのプロスポーツチームのオーナーであるDan・Gilbertである。デトロイト復興のために、まずはQuicken Loanの本社をデトロイトに移し、さらに総合不動産デベロッパーの“BEDROCK”を創設した。

BEDROCKは、街の再開発だけではなくテナント誘致からそのプロモーションといった細部に至るまで、まちづくりの全てを行う。そのために2200億円を投資し、95の不動産を取得し都市再生を行った。その取得用地は150万平方メートルにも及び、14000人以上の雇用を創出した。
この動きに共感したのがカジュアルな腕時計で世界を席巻した「Fossil」の創業者Tom・Kartsotisだ。彼自身はテキサス州出身であるが、デトロイトの再生に関心をもち、デトロイト発のアメリカン・クオリティ“SHINOLA”
を立ち上げた。SHINOLAは、時計から自転車・バッグを製造販売し、コーヒショップも併設し、新しいライフスタイルを提供している。ここでは350人以上の雇用を生むこととなった。
ここが世界中の注目を集めたのは、オバマ前大統領のデトロイト訪問時のこと。「これこそアメリカ再生のモデルだ」として、SHINOLAの腕時計を購入し、さらに英国のキャメロン前首相にもプレゼントしたエピソードで一躍話題となった。

そしてこのDanとTomが共同で立ち上げるのが2018年に開業予定のSHINOLA HOTELである。
の動きから日本が学ぶべきことは、産業が空洞化し行政が破綻した時に、「持続可能な都市を誰が仕掛けていくのか」ということだ。

デトロイトはまさに強いアメリカを取りもどすべく、大中小の事業規模や新旧の社歴に拘らず、DanとTomの二人のヒーローに気概を感じた企業によるオープン・イノベーションとしての民間投資が始まっている。

それは新しいコ・ワーキングやワークシェアリングという真の働き方革命であり、健康的なレストランやカフェ、アパレルなどの新しいライフスタイルであり、植栽にあふれた街区やエコな交通インフラである。デトロイトからまさに新しい時代のアメリカン・ライフスタイルが胎動しているのである。

しかもそのスピードには驚かされる。2013年に破綻し、全米一の治安が悪い都市として銃撃や殺人事件が横行し、行政がコントロールを失った都市に、DanやTomらが投資を始め、わずか4年で新たなデトロイトの象徴としての路面電車を走らせ、この動きを」面白い」と思ったベンチャー企業が集まってきている。日本では、こうした悲惨な状況に飛び込む企業はいくつあるだろうか?
 
都市のサステナビリティのエンジンは、底値であったときにこそリスクを抱えても投資を決断し、さらには新たなGood Lifeを創造するような新規事業を巻き込んでいく力であると、フロンティアへの挑戦を肌身で感じることができるのが今のデトロイトなのである。

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