先日はハロウィンで多くの人々が様々な仮装をして楽しんだと思います。その中でアニメのキャラクターを模したコスプレなどをした人をよく見ると思うのですが、よくよく考えるとあれらは著作権侵害にはならないのでしょうか。今回はアメリカでは一般的なフェアユースという概念について見ていきたいと思います。
フェアユースとは
フェアユース (fair use、公正利用とも訳される) とは、アメリカ合衆国の著作権法などが認める著作権侵害の主張に対する抗弁事由の一つである。同国の著作権法107条 (合衆国法典第17編第107条) によれば、著作権者の許諾なく著作物を利用しても、その利用が4つの判断基準のもとで公正な利用(フェアユース)に該当するものと評価されれば、その利用行為は著作権の侵害にあたらない。このことを「フェアユースの法理」とよぶことがある。
米国におけるフェアユースの大きな特徴の一つは、著作権者の許諾なしに著作物を利用できる場合(言い換えれば著作権が制限される場合)について、欧州連合や日本の著作権法のように具体的な類型を列挙する(限定的使用のための複製や引用、裁判手続等における複製など。)のではなく、抽象的な判断指針として示していることである。
フェアユースの歴史
フェアユースの法理は、米国において1841年の Folsom v. Marsh 判決(マサチューセッツ州連邦巡回裁判所)において最初に確立されたものとされる(例えばCampbell v. Acuff-Rose Music, Inc.の最高裁判決)。
Folsom v. Marsh判決では、ジョージ・ワシントンの書簡に伝記を付した著作物を編纂した原告が、そこに掲載されたワシントンの文章の抜粋をふんだんに盛り込んだ伝記を記した被告を訴えたもので、ストーリー裁判官はイギリスの判例を参照しつつ被告の利用が正当化可能な利用であるかどうかを検討した。その中で、この種の問題については往々にして以下の3つの要素を考慮することが必要になるという見解を述べた。これらは後の裁判で参照され、現在の4つの要素を考慮する考え方となっていった。
「抜粋の性質と目的」
(the nature and objects of the selections made.)
「利用された部分の量と価値」
(the quantity and value of the materials used.)
「原作品の売り上げの阻害、利益の減少、または目的の無意味化の度合い」
(the degree in which the use may prejudice the sale, or diminish the profits, or supersede the objects, of the original work.)
判例を通じて形成されたフェアユースの法理は、1976年制定の著作権改正法で初めて条文として盛り込まれた 。この条文化は判例の確立した考え方を立法によって変更するものではなく、単に条文に盛り込んだものだとされる。なお、これ以前にも1960年代にはフェアユースの4要素を法の条文に盛り込もうという試みは存在している。Patry (1995) によれば1964年のH.R. 11947、H.R. 12354、S. 3008の3法案はいずれもそのような改正案を含んでいる。
日本におけるフェアユース
日本国著作権法においても、著作権の効力が及ばない著作物の利用行為が規定されている(日本国著作権法30条〜47条の3)。しかし日本国著作権法における著作権の制限規定は、著作権の効力が及ばない著作物の利用態様を個別具体的に列挙したものである点でそれを一般的抽象的に規定したアメリカ合衆国著作権法におけるフェアユース規定(合衆国法典第17編第107条 17 U.S.C. § 107)とは異なる。
日本において日本国著作権法30条 - 47条の3によって定められた範囲を超えて著作物を利用した場合に、フェアユースの抗弁によって著作権侵害を否定できるかがしばしば論点となる。著作権法1条(法目的)に見られる「文化的所産の公正な利用に留意」の文言に基づいてフェアユースの抗弁を認める説も存在するが、現在のところそれを認めた裁判例は存在しない。逆に「ラストメッセージin最終号事件」や「ウォール・ストリート・ジャーナル事件」のようにフェアユースを否定した判例は存在する。
いかがでしたでしょうか。日本はアメリカほどフェアユースの権利が認められていないようですね。日本でも今後さらにフェアユースの概念が拡大されていくことを望みます。
それではまた次回!
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