「オリンピック開催はアメリカ次第」 こう言ったのは元電通で東京オリンピック委員会の理事を務める高橋治之だ。(この人嫌い) また、同氏は「バッハ会長に意思決定はできない」とも言っている。ちょっと言いすぎな気もするが、一理ある。なぜなら実質的にはIOCよりもオリンピックに多額の資金を投じているNBCをはじめたアメリカの放送局やワールドワイドパートナー企業の方が発言力を持っているからだ。一般企業でいうところの物言う大株主である。 実際、昨年の段階ではオリンピックを2020年の秋に延期という話もあったがこれはありえない。なぜならアメリカ国内で絶大な人気を誇るNFLのシーズンと被るからだ。なので、NBCもオリンピックは開催してほしいが、あくまでもランクとしてはNFL以下である。 では、オリンピックが中止になったらNBCは大損するのか。NBCは1980年のモスクワ大会の放送権を8700万ドルで獲得した。広告業界誌AdAgeの当時の記事によると、米国がモスクワ大会をボイコットしたことで、NBCは3000万ドル以上の広告収入を失ったそうだ。ただし、仮に、東京オリンピックが中止になっても、NBCは損失を補填する保険に加入しているとされていて、大きな損はしないと言われている。前述したAdAgeによると、1980年のモスクワ大会のときも、NBCは保険に加入していて、8700万ドルの放送権料のうち約90%を取り戻したと伝えている。広告収入では損をするが、保険もあり、大損はしないということだろう。 ところで先日、フロリダ州知事がIOC宛にオリンピックを東京ではなくフロリダで開催したほうが良いという書簡を送った。バカげた提案だという声が多かったが可能性は0%ではない。となると一番最悪のシナリオはこうである。まず、アメリカ選手団がコロナ感染リスクから大会への参加をキャンセルする。そうなるとアメリカのワールドワイドパートナー企業は大損するため、IOCにフロリダ開催案をプッシュする、という流れだ。 先日、フロリダ州知事はフロリダのアピールしかしなかったが、これに加えて東京のネガティブキャンペーンもされたら東京は正直なにも反論できない。なぜなら、JOCは招致時に宣言した4つの公約(安全な大会、発達した交通網、イノベーティブな大会、上質なおもてなし)を現時点で何一つ達成できていないからだ。一方でフロ